渡良瀬遊水地に生育しているワタラセツリフネソウの画像その1
渡良瀬遊水地に生育しているワタラセツリフネソウの画像その2
渡良瀬遊水地に生育しているワタラセツリフネソウの全体画像と説明文書
渡良瀬遊水地内のワタラセツリフネソウ芽生え
渡良瀬遊水地に生育しているワタラセツリフネソウの画像その4
吸蜜するナガサキアゲハ

 ワタラセツリフネソウ(黄・斑型)の花を分解し、さらに萼筒を開いた画像。

 

 ワタラセツリフネソウには花に次の4型がある。黄・斑型、白・斑型、黄・無斑型、白・無斑型。

 

 萼筒に、黄色い帯が2条あるが、これは黄型の特徴で白型にはこれがない。同時に斑点が見られるが、無斑型には斑点がない。

 

 渡良瀬遊水地では、黄・斑、白・斑型が同程度に多く、無斑型はいずれもかなり少ない。無斑型はいまのところ渡良瀬遊水地だけで見つかっている。

 

 現在報告されたもので、埼玉県産のものはすべて黄・斑型。千葉・茨城県産のものはほとんど白・斑型。遊水地外の栃木県産のものはすべて白・斑型。なぜこのような分布になっているのか解明が期待される。

ワタラセツリフネソウの側花弁

 

 側花弁の根元に「側花弁上方基部の裂片」とされる小型の花弁がついている。

これは小型ながら別の花弁が合着しているもの(便宜上小花弁と呼ぶ)。

 

 ワタラセでは小花弁の形が、ほぼ左右相称で、先端が萎縮して黒紫色になっている。この形態が山地などに多いツリフネソウとの良い区別点となる。

ツリフネソウの側花弁

 

  ツリフネソウの小花弁は左右非対称で、先端は長く伸びている。

  この小花弁の形の違いは比較的明瞭なもので、両種の同定には最も使える。 

 

 ツリフネソウは全国各地の山地などに普通に生えているものだが、渡良瀬遊水地にはワタラセばかりでツリフネソウは見られない。

 しかし一般に両種が環境の違いで完全に棲み分けているわけでもなく、混生している産地(遊水地ではない栃木県で2カ所)が見つかっているので、遊水地にもある可能性がある。



ワタラセツリフネソウ ツリフネソウ科

学名:Impatiens ohwadae

花期

 9~10月

出会い度  ★★★★★(渡良瀬遊水地内)
草丈  50~100cm
環境  ヨシ原
特徴  1年草。ツリフネソウとよく似ているが、側花弁上方基部の裂片(これは小型だが真の花弁)の形態で明瞭に区別できる(画像参照)。花茎に剛毛のないことが多いが、剛毛のある集団も見つかっている。花に4型があり、株の花はすべて同じタイプであることから、遺伝的な違いと考えられる。生育地は、関東地方(栃木、埼玉、茨城、千葉)の低地に限られている。
備考

本種は、2005年9/21の日本植物学会において新種として発表された。

記載論文は、2009年12月、以下の通り発表された。

渡邊幹男・芹沢俊介 2009 「ツリフネソウ属の1新種ワタラセツリフネソウ」 『シデコブシ第1巻 第2号』p61-70 愛知みどりの会(愛知教育大学自然科学系生物領域内)