知る活動

 

2023年


調査会 2023/11/04

 天気予報では夏日になるという晩秋 の11月4日。植物は花の時期を終え、みのりの時期に入っている。今日はどんな出会いがあるかなと思いながら、駐車場で皆さんと落ち合った。調査場所は、今年はまだ行っていなかった草原。道々サイクルフェスタの自転車集団をよけながら目的地まで車で移動。

 まず、出迎えてくれたのはコセンダングサ。黄色の花が堤防上を覆っている。分け入ると果実が知らぬ間に付着。堤防下は綺麗に草が刈り取られ、枯草がクッションとなり、歩きやすい。

 さらに好都合なことに目的地までの薮は刈られていて、道ができている。薮の中のつる性植物を幾つも確認しながら進んでいく。オニドコロ、ヤマノイモ、ニガカシュウ、ヘクソカズラ、アオツヅラフジ、ツルウメモドキ、イヌツルウメモドキ。いずれも巻きつき型のつる植物。巻き方は種によって普通決まっている。ヘクソカズラは左巻き、ヤマノイモは右巻き、オニドコロは左巻き、ニガカシュウはどっちだろう?

果実の形や色が様々だ。ヤマノイモとオニドコロの果実には翼がある。ヤマノイモには沢山のむかごもついていた。ヘクソカズラの実は黄土色、アオツヅラフジは藍黒色、ツルウメモドキ、イヌツルウメモドキは赤色。また、アオツヅラフジの葡萄状の実は有毒で、潰すと種子が1つ入っている。その種子の形はまるでアンモナイト。イモムシが丸まっているみたいにも見える。生き物の形や色は時に見事なまでの意匠を纏っている。でも、実が有毒では、動物散布に適さないように思うが、特別な仕掛けがあるのか?

 アオミズ、何度も調査会で出会っている植物だが、花のつくりまで注意を向けていなかった。雌花序と雄花序が混生しているという。既に花の時期を過ぎて確認ができないので、これは来期の宿題。ほかにコアカザ。

 いよいよ、薮から草原に向かう所では難関が待ち受ける。泥と水溜まり。枝を支えに何とか沈まないように切り抜ける。

 草原は各所に水が溜まり、ヤチボウズも出来ている。湿原と言う方が妥当のようだ。所々にアリノトウグサの葉が地べたを赤く染めている。拡大写真で見ると、花は子房が紅色で下向きに咲く、可愛らしい花だ。雄性先熟、雄性期から雌性期に変わると花弁と雄蕊は落ちてしまうという。すでに花は終わり、実も落ちている。写真では、実の形は8稜がアクセントの数珠玉のようだ。花や葉の細部を見るにはルーペが必要不可欠。まだ持っていないので、購入予定だが、LEDライト付きがオススメという。ヒメナエもあちこちに白い花が見つかる。小さく弱々しい風貌は絶滅危惧を納得させるが、生き残っているには強さもあるはず。何だろうか。イヌセンブリは随所に株があり、ホソバオグルマもそこここにあった。ナガバノウナギツカミはTさんの熱心な探索によって、群落が見つかった。茎が赤く花は濃いピンク色、葉柄がある、紛れもないナガバノウナギツカミ。

 途中でAさんが、絶滅危惧種について「絶滅、野生絶滅、ⅠA類、ⅠB類、Ⅱ類、準絶滅などに分けている。ⅠA類、ⅠB類、Ⅱ類、準絶滅の順に絶滅危険度が高い。」と、そのランクを教えてくれた。

 

  絶滅危惧種はその半数以上が植物で、最新のレッドリスト2020では絶滅危惧種3,716種の内、植物2,030種(維管束植物+蘚苔類)、哺乳類34種、鳥類98種で圧倒的に植物が多い。ここでいう絶滅危惧種とは、ⅠA類、ⅠB類、Ⅱ類 に相当するものを指し、植物のⅠA類+ⅠB類は1,186種、Ⅱ類は844種。渡良瀬遊水地の絶滅危惧植物は多くがⅡ類の植物である。絶滅危惧の評価は「個体数の減少」、「生育面積」、「集団サイズの縮小」、「個体数が少なく、分布も特定の場所に限られている集団」、「将来における絶滅の可能性」の5つの項目基準があり、そのいずれかに該当する場合に絶滅危惧種となる。因みに、Ⅱ類では例えば「個体数の減少」について、「過去10年間にわたって、あるいは3世代を継続観察していて、50%の個体数に減少してしまったが、原因がわかっていていまは取り除かれており、増加に転じることは可能」、「過去10年間にわたって、あるいは3世代を継続観察していて、70%以下の個体数に減少してしまい、原因が不明でいまも改善されず、減り続けている」、「開発や気候変動などで、将来10年間、あるいは3世代のうちに70%の個体数に減少する」、「過去と将来の10年間、あるいは過去・将来の3世代のうちに、個体数が70%以下に減ってしまい、減る一方で、原因がわからない」の具体的基準が決められており、どれかにあてはまるとⅡ類となる。他の項目についても具体的基準が決められている。渡良瀬遊水地の絶滅危惧植物は実際にはどの基準に該当し、絶滅危惧となっているのか。また、渡良瀬遊水地にかろうじて生き残っているのはなぜなのか、生存を可能にする環境条件は具体的には何なのか。これがわからないうちは、現在の環境を可能な限り維持することが私たちにできる最大限のことかもしれない。

 

 湿原内を探索し、シカクイ、メリケンカルカヤ、ヤマイ、テンツキ、ヒメシダ、アイダクグ、トダシバが見つかった。

 一通りの調査を終え、帰り道。また、新たな発見。ヤワラスゲ、イヌコウジュ、ノカラマツ、コバノカモメヅル、ツルマメ、ヤブマメ。ツルマメもヤブマメも共に豆果があり、大豆に似たツルマメ、ヤブマメはさやえんどうに似ている?ヤブマメは地下の閉鎖花にも豆果ができ、一つの種子が入っているという。地上の豆より大きいそうだ。そのまま地下から芽を出すのだろうか。なんとも効率的だが、何だか不気味な気がする。(KMae)



調査会 2023/10/21

 10月21日、桜づつみの東屋から賑やかな声が聞こえてくる。参加者19名、天気が良くて絶好の散策日和、全員すこぶる晴れやかな笑顔を見せている。堤防沿いに植樹された「思川桜」が開花し、桜談義が既に始まっている。さて、今日は新たな会員を2人迎えた。那須塩原の遠方より参加くださるUさんのお友達、KさんとHさんだ。いざ、歩いて出発!

 堤防から下に降りて、刈り払いされた道に入ると、入り口付近にはカゼクサがなびいている。ユウガギク、ヌカキビ、イヌタデ、アキノノゲシが見つかる。咲き始めて1週間ほどのイヌセンブリも。

 水辺まで来ると、カンエンガヤツリの群落がお目見え。浅い水底にはフタバムグラがびっしり生えている。「カンエンガヤツリの見極めは小穂を確認」とAさん。小穂の鱗片は中肋が緑色で側面が茶色、先端は突出して芒状となる。撹乱依存種という。和名は江戸末期の本草学者、岩崎灌園に因んでいるそう。水際ではヒメガマの葉を触り、表面がツルツルで蒲鉾状の厚みを確認。

 タコノアシ、オオイヌタデ、イヌゴマ、ノブドウ、ホソバオグルマ、ヒメシオンを道沿いで発見。タコノアシは赤く、ノブドウの果実は紫に色づいている。タコノアシの種子はとても細かい代わりに一つの果実に沢山入っている。種子にある突起で空気の膜ができ、水に浮くという。流れ着いた先で発芽条件が整うのを待つのだろう。ヒデリコの種子もそうらしい。写真映えしそうなイヌセンブリを前に、「リンドウ科で花冠に縦筋、雌しべ雄しべの基部に長毛がある」とイヌセンブリの特徴を新加入のHさん。言葉にするとわかりやすい。さらにサクラタデの花を見に行く。少し茎を斜めに傾けつつ、薄いピンク色に染まった華やかな花が付いている。

 場所替え。トキンソウ、コブナグサ、アゼトウガラシ、ヒレタゴボウが周囲に見つかる。「コブナグサは葉の形が小鮒に似ることが名の由来で黄八丈の染料になる」とYさん。ハチジョウカリヤスの名で呼ばれ、刈安色のカリヤスとは別種である。カリヤスは平安時代に用いられた黄色の染料である。

 水際にシロガヤツリ、キクモ、テンツキsp、ヒデリコ、マツバイ、カンガレイ、アメリカタカサブロウ、紅葉したヤナギタデも。ヒメミズワラビも。シロガヤツリの小穂の鱗片は少しねじれて、アオガヤツリの鱗片の真っ直ぐな真面目さと異なることをKさん持参の図鑑でその場で確認。

 戻り道では、オオクサキビ、オヘビイチゴ、ハキダメギク、スズメウリ、イヌガラシを見つける。Aさんはアカネの群落を単独で発見。アカネの根茎は古来茜色の素になった染料で、褪色しにくい。そのため鎧の組紐や革紐を染めたらしい。

 堤防上でコニシキソウとアメリカスズメノヒエ。

 

 午後は有志で水辺を歩く。早速、イヌコウジュ談義。後で図鑑で調べてみたが、イヌコウジュとヒメジソの見分けは難しい。上萼頭が鋭いイヌコウジュ、上萼頭が鈍いヒメジソ。その他、腺点や葉の毛、分果の模様などが目安。実物で確認しないと覚えられない。水辺にはイチョウウキゴケが一面に浮かんでいる。水に浸っているものは酸素の泡を表面につけて光合成中だ。カンエンガヤツリもある。

 道々、外来植物のホウキギクあり。「ヒロハホウキギクとの違いは枝の出る角度が狭い」とDさん言わく。ホソバイヌタデも見つかった。脇道を入っていくと、シロガヤツリとフタバムグラの群落に出くわし、サナエタデを見つける。「サナエタデとオオイヌタデだけが托葉鞘に毛がない、サナエタデは節が膨らんでない」と教わる。ここにはカンエンガヤツリも背が低いが混じっている。コバナキジムシロ、ウシハコベ、コメナモミも帰りすがりに見つかった。

 

 さらに、コシオガマが咲いている場所まで車で移動した。コシオガマは半寄生植物。近年、植物はストリゴラクトン(植物ホルモン)を放出し、菌根菌を呼び寄せて共生関係をつくることがわかっている。そのストリゴラクトンが寄生植物の発芽を促し、宿主に寄生することを可能にしている。アフリカでは寄生植物ストライガにより農作物に被害が出ているという。遊水地のコシオガマの宿主がいったい何かわからないが、菌根菌になりすまし、地下で宿主から養分をちゃっかり横取りしている。また、近くにはエゴマあるいレモンエゴマと思しきものが複数株、花を咲かせていた。エゴマかレモンエゴマかについては見解が分かれて決め手を欠き、後日の宿題となった。白花個体と赤花個体の2種類が確認できた。(KMae)

 



調査会 2023/10/07

 10月7日、今日も昨日同様に強い風が吹いている。強風が熱い空気の塊を一気に吹き飛ばして、空は薄青色の乾いた秋空。

 今日の目的地2ヶ所がTさんから発表され、新加入のUさんを交えて、まず掘削池の周囲の刈り払いされた道に入っていく。ヨシが風よけとなって案外と歩きやすい。ヨシに混じってセイタカアワダチソウがかなり生えている。既に花の時期で堤防から眺めても緑色の中に黄色の帯が至る所に見えている。

 道のあちこちに、花をつけた、アオヒメタデヤナギタデが生えている。ホソバイヌタデイヌタデも。「ホソバイヌタデの花の色は上品よね」とはTさんの弁。「どうやら今日はタデづくし?」と思っているところで、「イヌコウジュ?レモンエゴマ?」の問答が始まった。Aさんのお裁きによりレモンエゴマに軍配があがり、一件落着。葉の特徴が異なるらしい。

 目的の池には着いたものの、イノシシのぬた場が水際にいくつもの大きな穴を開けている。以前とは異なる様子に期待が外れて皆さん、がっかり。それでも気を取り直して、辺りを見回すと、ぬた場の隣りをヒメガマが覆い、そこにマツカサススキが紛れ込んでいる。日なたの裸地にはハタケゴケが生えている。さらに、アオミズの若々しい緑色、ヒメジソチョウジタデヤノネグサコバノカモメヅル(袋果)、アキノウナギツカミイシミカワ(果実)、ゴキヅル(蓋果)などが見つかった。

 イノシシのぬた場は撹乱にあたるのか?だとするとどう影響するのか、気になるので継続して見ていきたい。

 タデ科について帰宅して調べてみると、「特有の托葉鞘(葉の基部に付随する托葉が鞘状に茎を巻く)がある」とある。なるほどと思って図鑑で確認すると、いずれにも確かにある。因みに、アキノウナギツカミヤノネグサイシミカワもタデ科で托葉鞘(イシミカワは鞘ではないようだが)がある。チョウジタデはタデとは名がついているが、別科の植物。

  帰り道で行きには気付かなかった、カンエンガヤツリをAさんが発見。一株のみ。普通は群生するらしいということで、辺りを見回すも他にはなく。その後もメリケンカルカヤテンツキアイダクグsp.を見つけた。「ヒメクグアイダクグ、タチヒメクグの中で、アイダクグだけ地下茎をもつ」と実物を見せてもらってAさんに教わる。でも、ここのは地下茎はあるけれど、アイダクグとは異なる特徴もあるらしい。変異種なのか?

 

 続いて、5月に行った水辺へ。今回は見事に干上がってしまっていた。随分な様変わり・水位変動に驚きながら、興味津々で皆さんの後を追う。

  1.  キクモが小さくも健気に所々に生えていて花がついている。ヒナガヤツリも随分小さい(5cm程度)けれど、構造が全て備わっている。成長途中ではない成熟個体。キカシグサの隣には少し背高なアメリカキカシグサ。青紫色の花をつけたサワトウガラシ、白花のアゼトウガラシシソクサ。地面にへばりつくようなヒメシロアサザマツバイニオイタデ。ヒメアメリカアゼナの群落。トキンソウ

 この場所で今回見られた種は多くがとても小型であった。このような小型サイズでは周囲に植物が生えていない裸地に生育するしかなく、他の場所では見ることがないのもわかる気がする。生育可能な環境がなくならないといいけど…。

 探索するうちにキクモの一大群生地を発見して興奮したり。エダウチスズメノトウガラシは残念ながら見つからなかったけど、エダウチの表現が枝分かれを意味するとの話に感心したり。Sさんの「ヒメシロアサザの花がありました」の一声にどれどれと見に行ったり。コウノトリが一羽上空を優雅に通過して行くのを目で追ったり。充実感たっぷりの調査会だった。

 

 一般的にヒメシロアサザの花には自家受粉する閉鎖花が多いそうで、それでも結実は良く果実には沢山の種子がつまっているという。根茎で越冬する多年草の集団と種子をつくる一年草の集団があるという。今回のヒメシロアサザが一般的なものかどうかはよくわからない。白い開放花ばかり探していたので、閉鎖花があったのかどうか。開放花が多いタイプもあるのか?根茎から生えてはいなかったと思うから一年草タイプだったのだろうか。いずれにしろ根茎タイプも種子タイプもどちらも遺伝的多様性は低く、存続が危ぶまれ保全の必要性が高い種であることは間違いない。(KMae)

 



調査会 2023/09/16

 9月16日、今年はいつまでも暑さが続いている。今日も湿度が高く、蒸し暑い。せめて風が吹けば過ごしやすいのに。諦めて思い思い、堤防沿いを歩いて行く。今日は参加者18人である。

 

 堤防沿いでまず目に入ったガガイモ、花の色は白またはピンク、花には長毛が密に生えている。Yさんによると、古事記にはスクナヒコがガガイモの実の外皮半分を舟にしたことが記述されているという。古来から生息していたことは確かである。ワルナスビの花と実がそこここにある。ツリガネニンジンの白花と紫花。ツルフジバカマの花は優しい薄紫色で、可憐なフォルム。堤防を覆っているのはセイバンモロコシの赤褐色の穂。外来種とはいえ、これはこれで風情がある。

 

 さて、いよいよ堤防から草をかき分け、湿地に降りていく。ハイヌメリグサ、ヒメジソツユクサヤブツルアズキコブナグサワタラセツリフネソウ。植物名が賑やかにそちこちで飛び交う。コブナグサは穂が美しいそうだが、まだついていない。ワタラセツリフネソウの花の赤紫色が周りの緑によく映えている。ここの花は黄色で斑点があるものばかり。

 

 

 ヤマイの茶色の小穂の合間からイトイヌノヒゲの星のような花が、目に入る。地面はデコボコ、イノシシにやられているが、イトイヌノヒゲの群落は健在だ。イトイヌノヒゲの頭花は雌花と雄花の集まりだという。受粉に好都合なためだろうか。ゴマクサの花の黄色も、シロバナナガバノイシモチソウナガボノワレモコウの白い花イトイヌノヒゲ群落に混じっている。シカクイチゴザサヒメシオンもある。ミミカキグサが地面すれすれに黄色の顔を覗かせる。踏みつけないように気をつけて。

 

 シロバナナガバノイシモチソウミミカキグサは食虫植物である。シロバナナガバノイシモチソウの葉は粘液を出して虫を捕食する。故に、この草で地面をなでると小石がついてくる(?)から石持草の名がついたと牧野図鑑にある。午前中に花が閉じるとも。ミミカキグサの地下茎は糸状で捕虫のうがあり、地下茎から線形の葉、花軸が伸び、葉の基部にも捕虫のうがあるという。その図が牧野図鑑に載っている。地下内の現物を一度見てみたいと思うのは私だけか。捕虫する生き物はいったい何か?地下茎はどこまで広がっているのだろう。

 きみどり色が鮮やかなコウガイゼキショウの仲間、ヌマトラノオの小ぶりの株もあった。

 

 さらに歩いて、堤防の中ほどの高さにある植物を保護する枠にたどり着いた。保護枠の中にはゴマクサに紛れて、ヒメナエがほそぼそと可愛い白花を咲かせていた。しかし、ごく少数しか見当たらない。

 

 調査会お開きの後、有志数人で、春にタチスミレを確認した場所に藪を抜けて行ってみた。シロバナサクラタデの群落がまずお出迎え。ここのは、長花柱花ばかりで種子をつけない。めしべ・おしべの長さを決める遺伝子と、受粉の成否を決める遺伝子がセットで、たぶん超遺伝子をつくり、同じ型どうしでは種子ができないようにしている。種子ではなく地下の根茎から芽生えてくる。従って、群落はクローン集団。遺伝的多様性が極めて低い。

 

 さらに藪を抜けて行くと、開けた草原に出た。ここには、貧栄養の環境下で適応する植物が生えているとAさんから説明を受けた。トダシバイヌセンブリが見つかり、イヌセンブリはまだ花をつけていない。ヒメシオンも見つかる。藪の中に一株だけホソバオグルマの花が咲いていた。コバノカモメヅルの暗紫色の花も存在感を示していた。(KMae)



調査会 2023/09/02

 9月2日、久しぶりの調査会は、過去にホソバイラクサ群落が確認されていた地で今も生息しているかどうかの現状調査を兼ねている。差し詰めホソバイラクサ探検隊。16名の32個の眼で隈なく探すことに。手がかりは、1枚の地図のみ。いざ、越流堤へ。

 まず目を引いたのは、2個のマス状の堀。雨が降らないために涸れている堀が散見される中、一面とても鮮やかなみどりに覆われている。ウキクサの類いらしい。アオウキクサは葉状根が1本に対してこれは複数ある。しかし、ハッキリと同定はできない。きみどり色の小さい、ウキクサらしきものが隙間なく、表面に浮かんでいる。底は浅く、水は比較的透明で、水中にはコカナダモが生えている。光をウキクサに奪われるだろうに。コカナダモは陰生植物か。コカナダモの見分け方、輪生している葉がねじれていることを教えてもらう。コカナダモは日本では雄株のみ自生し、栄養繁殖で増えるらしい。

 16名はゾロゾロと越流堤に続く段差を乗り越え、段差の内側へ。乗り越えた先にあるはずのホソバイラクサを求めて。マス堀を覗き込み、あるいは周囲の植物を確認しながら。先頭はさらに藪の中へ分け入っていく。過去の群落の経度・緯度の情報をもとに、程なくしてホソバイラクサらしきもの発見の知らせが届く。同定は決めてがなく先送り。発見場所を確認するため、数人が藪の中へ。かろうじて一株から枝分かれして生えている。近くに群落があるのかないのか、藪が深くてわからない。

取り敢えず、目的達成。時間も丁度よく、調査会はお開きを迎えた。

 その後の調べにより、ホソバイラクサらしきものは、オオバコアカソと判明した。残念ながら、ホソバイラクサは今回確認できなかった。

 

 この日確認された植物は、メドハギ、ヤガミスゲ、スズメウリ、イボクサ、アマチャヅル、ナツヅタ、ヤマノイモ、ニガカシュウ、アレチハナガサ、カワヤナギ、マツカサススキ、ヌマガヤツリ、コゴメイ、ニガクサなど。

 アレチハナガサはマス堀の外側に多く確認された。花は薄紫色で可愛らしいが、外来種である。

 ニガカシュウ、ヤマノイモは、共に単子葉ヤマノイモ属でむかごをつくり、雌雄異株である。むかごとは言っても、ニガカシュウのは苦くて食べられないらしい。葉のかたちは異なり、ニガカシュウは円心形で、ヤマノイモは3角状披針形とある。雄花序はニガカシュウは下垂し、ヤマノイモは直立する。雌花序はどちらも下垂するが、一般にニガカシュウの雌株は殆ど見つからないといわれている。しかし、渡良瀬遊水地および渡良瀬川流域では雌株ばかり確認されているという。

 また、マス堀は隣接する場合でも、各々独自の生態系をつくっていて、水の色が全く異なっていた。茶色や薄青味がかっていたり、内部の状態を反映していると思われる。ある茶色の堀では、小さいゲンゴロウの仲間の一種が呼吸のためだろうか、浮き上がり、浮き沈みを繰り返していた。(KMae)



調査会 2023/07/01

 集合時間になっても雨が降っています。でも、傘をさして調査する「覚悟」なので、出発です。薮は敬遠して、水辺へ。

 おお、クサネムがいっぱい。キクモらしき水中葉が散在していて、踏みそうです。アブノメも、踏みまくり?かねません。ヒメシロアサザも増えました。これだけあるのだから、1株くらい花が咲いていてもいいはず、とみんな目をこらします。そのうちツボミを見つけました。半開きの花も見つけました。そして、一つだけでしたが、全開した花、発見! 来たかいがあったと喜ぶD会員。私自身も、じつは自生のヒメシロアサザの花を見るのは、初めてです。

 エゾミソハギも咲き始めていました。コナギもあちこちに。イチョウウキゴケもありました。ここで見るのは、初めてです。コウガイゼキショウもあります。と、これは何?とK会員。小さな白い花が浮いている。どうも、外来種のウキアゼナのようなのですが。可愛らしい花ではあります。

 カンガレイは花粉をつけた雄花が真っ盛りです。でも、株の下の方に、雌しべの白さが目立つ花もありました。A会員が立ち止まったので皆でのぞき込むと、マルバヤハズソウが。最近、ヤハズソウは多いけれど、マルバ・・は少ないそうです。そうなんだ。

 ホソバオモダカを見つけたY会員の「ヘラオモダカの葉っぱって・・?」という一言から、移動して、ヘラオモダカを見に行くことに。雨はやみました。

 さすがにヘラオモダカは咲いてないだろう、と思ったのですが、咲いていました! ちょっと離れた場所だし、ちい~さい花なので、1枝折り取って足元に置いて、皆で撮影しました。そばにミクリもありました。そして、花をつけたホタルイが群生。イヌホタルイならいやになるほど見ていますが、ホタルイは初めてです。パッと見、イヌ・・よりホタルイの方が繊細みたい。ヤブマオも、白いきれいな雌花をつけていました。

 芳しくない天気なので、出席者は数人かしら、と思いながら出かけたのですが、久しぶりに参加してくれたM会員とA会員も含めて、13人の出席でした。(YT)



調査会 2023/06/17

 いい天気です。昨日の雨で洗い流されて、空は真っ青、山は男体山から皇海山、赤城山までよく見えます。いつも仕事で参加できなかったW会員が久しぶりに顔を出してくれました。新規加入のA会員も含めて、20人で出発です。

 ハンゲショウが白くなりました。ノカラマツも、ゴマノハグサも咲きました。イヌゴマも、ヒルガオも咲いています。

 ヨシをかきわけて進むと、かなり水のたまった場所があります。昨日の雨で、深くなったようです。そこにはショウブやシロネがありました。さらに行くと、両側にオニナルコスゲの群落が。やがて花をつけたチゴザサの群生地に着きました。

 そこに、ああ、よかった、ミズチドリが今年も咲いていてくれました。W会員が、「ネズミの害が・・」と言っていました。確かに、ひところよりは開花株がずいぶん少ないようです。いろいろな要因があるのでしょうが、これは、毎年、大切に見守っていきたいです。Y会員が、「ミズチドリの花って、ルーペで見たらキラキラしていた」と言うのです。その場にいた何人かで試して、皆、「本当だ!」 何度見ていても気がつかないことって、あるのですね。きっと、たくさん、そんなことがあるのでしょう。複数の人と調査することって、大事だなあ、と思いました。

 ヒメナミキがたくさんありました。これは以前より、ずいぶん増えているようです。何度撮影してもピンボケで、がっかりしてしまいますが。ヒメナエも咲いていましたが、この花はヒメナミキ以上に撮影の難易度が高く、初めから写真は断念。カサスゲもヒメシダもあります。トモエソウもたくさん咲いていました。が、・・なぜか咲き終わりかけたような、白っぽくなった花と、つぼみばかり。ここで見るトモエソウはいつもそうです。ほかの場所では、きちっとした巴形で、きらきら金色に輝く花を見ているのですが。時間帯のせいなのか、気温のせいなのか・・オトギリソウの仲間の花を見ごろに見るのは、難しいです。

 O会員がタチスミレを探しているので、みんなで参加。見つけました! 実をつけた株。もう裂開してしまったものも。そばに、果実をつけたハナムグラもありました。可愛い、丸い実。触れると、ホロホロこぼれ落ちます。

 ヒメクグもありました。セイタカアワダチソウも、たくさん。残念ですが・・ ヤノネグサやアキノウナギツカミも見つかりました。何度教えてもらってもヌマアゼスゲとアゼスゲの違いが分からない私、T会員はO会員に同定してもらいました。その結果、ヌマアゼスゲと。

 同じ道を通って帰ったのですが、来る時は気がつかなかったナワシロイチゴやエナシヒゴクサも「発見」しました。

 みんなで土手上から遊水地を眺めました。青空の下に広がる、みどり鮮やかな草原。きれいだなあ・・ひろいなあ・・ もう、これだけあれば何にもいらない、と思える眺めです。遊水地よ永遠なれ。

 解散して、一人で遊水地の中を通って帰ったのですが、前方に大小10頭くらいのイノシシが。車を停止したら、全員でゆっくり移動してくれたので安堵しました。もはや珍しくもないイノシシですが、いや、慣れませんね。(YT)



調査会 2023/06/03

雨天のため中止しました。


調査会 2023/05/20

 今日はどこを調査しようか・・そうだ、ジョウロウスゲの時期だ! 探しに行こう、となりました。毎日遊水地を歩いているM会員の案内です。ただ、そのM会員、先年単独でその池を歩いていて、迷子になり2時間歩き回ったとか。気をつけなければいけません。

 タチカモジグサやアオカモジグサが出穂している道を歩いて、件の池へ。ありました、ジョウロウスゲ。おお、若々しい、早苗色の雌小穂がモコモコです。ペットみたい。面白いスゲですね。ルーペで見ると果胞の先端が二つに分かれて外側に曲がっていて、素敵な造形です。魅力的なスゲです。近くにはウマスゲやヤガミスゲ、エゾミソハギやコキツネノボタンもありました。O会員がヌマアゼスゲの基部の鞘について説明してくれましたが、その時はわかった気になったのですが、家に帰ってきてから考えると、はて、詳細はどうだったろう・・?と。難しいですね。

 移動しながらナヨクサフジの白花の写真をみんなで撮りました。みんな、白花が好きですね。

 次の水辺はすがすがしく広く、水がきれい。セイタカハリイあり、カンガレイあり、フトイあり。コゴメイに、イグサ。ウキヤガラもいっぱい。キクモの沈水葉は小さなマリモみたいですね。オオバシナミズニラには、はあ、これがそうですかと冷たかったのに、ヒメシロアサザの小さな、小さな株に狂喜乱舞してしまったのは、何なんだろう・・ コナギだかミズアオイだかわからない株もありました。夏秋が楽しみです。みんな熱心に植物を観察しているのに、トンボばかり追いかけているT会員のような人もいます(私のことです)。ハラビロトンボ、ホソミオツネントンボ、イトトンボ類・・宝庫です。

 解散後のオプションは湿地と草原です。ウナギツカミ類の花が咲き、ハナムグラがいっぱい。とてもいい香りです。もうチゴザサも花穂を出しています。ゴウソがいっぱい! そうか、これがゴウソだったんですね。チガヤはフシゲもケナシも。A会員から、アゼスゲとヌマアゼスゲ、中間型のもの、3種類並べて教えてもらいました。そしてタチスミレ。これを見なければ、今回ここに来た意味がありません。足の踏み場もないほどではありませんが、結構咲いていました。もうひとつ見たかった花があります。レンリソウです。土手の斜面の草刈りされて しまった場所の1部がロープで保護され、そこに咲いていました。 風当りが強いせいか花弁が傷んでいて残念でしたけれども、見たのは久しぶりです。

 それから、カナビキソウの花がそこらじゅうに咲いていました。近くには、このあいだ見たオオルリハムシがいっぱいいました。個体によって、少しずつ色合いが違って、光沢も違って、興味深かったです。奥深いですね、遊水地の生物界は。(YT)



調査会 2023/05/06

 今季初めての調査会です。親睦を兼ね、車道を歩いて水辺に向かいます。

 

 渡良瀬川の岸辺には、ノイバラが花盛り。香りが橋の上にまで漂ってきます。

 車道といっても遊水地。侮れません。道端にオヤブジラミが咲いています。オオジシバリも咲いている。マスクサがありました。アゼナルコもいっぱい。

 ヤブマオの立派な株の近くには、イチゴツナギが。A会員が、白くて長い葉舌を見せてくれました。ミコシガヤも穂を立て、つぼみですがミゾコウジュもありました。綿毛をつけたノニガナが可愛い。ゴマノハグサハナイバナもあります。

 

 さて水辺へ。これが難儀でした。泥に足をとられる。ケキツネノボタンや、ウナギツカミ類が出迎えてくれたのですが。場所を変えても同じでした。それでも、広大な眺めは楽しめます。水と土と草本類の共演。タガラシの大株。フトイカズノコグサ群落。コツブヌマハリイ(刺針状花被片の確認を怠り、A会員に指摘されましたが。)も群生しています。ミズハコベの写真を撮ったら、キタミソウまで写っていました。オオアブノメも、あっちにもこっちにも咲いています。

 離れて対岸を歩いていたO会員がセリバヒエンソウオオカワジシャを持って現れました。こんなところにまで、セリバヒエエンソウが。なんだかガッカリです。花はきれいですけれども。

 

 解散後、有志でコギシギシを見にいきました。まだ花をつけた株もあり、感激です。初めて花を見ました。キタミソウのそばには、ムシクサの虫こぶが。これも初見です。少し離れたところには、すっくと花穂を伸ばしたミズタカモジ。そのそばにはウマスゲヤガミスゲが。マルバヤナギの下には、何株ものヤブタビラコが花をつけていました。

 

 もと来た道を駐車場まで戻ったのですが、やはり行きと帰りでは見つかるものが違うのですね。来る時は気がつかなかった、スイバの雄株がありました。今、土手はスイバで赤く染まるほどですが、雄株はその中にほんの少し。珍しいものに出会えて、ラッキーでした。(YT)

 

追記:コツブヌマハリイについて、その後A会員が刺針状花被片の確認を行い、コツブヌマハリイであることを確認しました。刺針状花被片については、下線の部分をクリックして、図鑑のコツブヌマハリイのページを参照して下さい。(2023/05/08)



観察会(会員有志) 2023/04/22

 総会後、有志でスゲの観察に向かいました。下見してきたA会員の案内です。

 おお。遊水地は緑、緑。今が一番きれいかもしれない。なんと鮮やかな緑の大地。風が渡って来ます。ああ、もう、何にもいらない、この眺めがあれば。

 と、歩いていくと、草原の一角が白く光っています。何だろう?チガヤではなさそうだけれど。A会員が一言。「オニナルコスゲの群落だよ」

 谷地坊主ができていてデコボコの、水のたまった、まことに歩きにくい湿地を超えて近づくと。確かに!オニナルコスゲの大群落が。葉っぱがことごとく光っています。オニナルコスゲの葉の表面がこんなに光沢があるの、初めて知りました。

 花期から果期に入ったカサスゲや、ヌマアゼスゲを見ながらさらに進むと、アゼスゲもありました。こちらは咲くのが遅いようで、花盛りです。ヒメシダの芽吹きも面白い。丸っこくて、可愛いです。

 わずかに起伏があって、少し高くなったところは全然水がなくて、ノカラマツやナガボノワレモコウやハナムグラがありました。その中にも株立ちしているスゲが。さて、これはアオスゲかノゲヌカスゲか。メアオスゲ、というのもあるらしいです。雌小穂のノギの有無がどうのこうの・・私には難しく、帰ってから勉強します。このスゲは、ノゲヌカスゲのようでしたが。

 さらに少し高くなったところには、イタチハギの芽生えもありました。こんなところにも進出しているのですね。チガヤもフシゲとケナシ、両方見ましたが、とても丈の低いものもあり、謎です。

 ヌマトラノオの群生の中にはタチスミレの芽生えも見られました。近くのヨシの茎に、全身きらきら光るきれいな甲虫!オオルリハムシのようです。シロネも近くにありました。

 土手の斜面にはシバスゲ。ハルガヤやクサボケ、ノニガナ。レンリソウがこれまたたくさんあって、つぼみをつけた株も見られました。開花期に、草刈りされないことを祈るばかりです。(YT)

 

付記:文中、アゼスゲとしたものは、A会員が持ち帰って精査したところ、アゼスゲではなかったと判明しました。限りなくヌマアゼスゲに近いけれども、ヌマアゼスゲとは花穂や花粉の形態が違うそうです。ヌマアゼスゲの変異なのか、他のスゲとの雑種なのかは、現時点では不明です。(2023/05/03 YT)



学習会 2023/03/25

会場:ハートランド城(旧藤岡スポーツふれあいセンター)研修室

 

 コロナ禍を経て、久しぶりの学習会です。

 最初の発表者は、会員の青木雅夫氏。去年遊水地で新たに会員の田中由紀子氏が発見し、青木氏が同定したドクニンジンについてで、タイトルは「巴波川にドクニンジン」です。(注)

 遊水地で見られるセリ科植物の種類と分類の話から始まって、ドクニンジンの分布、毒性の詳細を化学式を用いて説明し、摂取した場合の症状にも言及しました。それから発芽実験の結果や葉、花序、果実、茎の形態とシャクとの比較を詳しく説明しました。青木氏が撮影した写真が満載で、とてもわかりやすかったです。

 そのあと、やはり青木氏から、去年遊水地で見つかったエドヒガンの詳しい形態について説明がありました。(最初の予定ではこのあと皆でエドヒガンの花見をするわけだったのですが、本降りの雨と、今年の開花が早すぎたため、見ごろを過ぎたということで断念しました。残念です。)

 

 次の発表者は、同じく会員の白井勝二氏。2019年の台風で堆積した土砂や、2021年天候不順でヨシ焼きが行われなかった時の影響を踏まえた、ここ4、5年間の遊水地の状況を説明されました。特にサクラソウの株数の変化、開花した株の割合など、細かな数値で示されて、変化がはっきりわかりました。

 また、ノジトラノオ、タチスミレ、フジバカマ、エビネ、シムラニンジンなどの現況もその折々の生育状況を撮影されており、被害状況などがはっきりわかりました。イノシシの掘り起こした希少植物の根を埋め戻す修復作業などもされており、感銘を受けました。

 

 久しぶりの学習会で、想定外のことがひとつ。プロジェクターとパソコンをつなぐケーブルがない! 古河市在住の会員が自宅までとりにいってくれて事なきを得ました。その間、国土交通省出身の会員が、隣の部屋に展示してある、100年前の遊水地を描いた古図の解説をしてくれたのは意外な収穫でしたけれど。無事に終わって、ほっとしました。(YT)

 

(注)この発表の一部は、栃木県植物研究会 会誌 フロラ栃木に報告された。 青木雅夫、田中由紀子(2023), 栃木県巴波川にドクニンジンConium maculatum L.,フロラ栃木31巻,p.18-20

 

まず、セリ科の植物(これはハナウド)について解説中

 

学習会前に、展示「100年前の渡良瀬遊水地と今」の解説



知る活動 2017年へ 2018年へ  2019年へ  2020年へ  2021年へ 2022年へ