2023年
今日はどこを調査しようか・・そうだ、ジョウロウスゲの時期だ! 探しに行こう、となりました。毎日遊水地を歩いているM会員の案内です。ただ、そのM会員、先年単独でその池を歩いていて、迷子になり2時間歩き回ったとか。気をつけなければいけません。
タチカモジグサやアオカモジグサが出穂している道を歩いて、件の池へ。ありました、ジョウロウスゲ。おお、若々しい、早苗色の雌小穂がモコモコです。ペットみたい。面白いスゲですね。ルーペで見ると果胞の先端が二つに分かれて外側に曲がっていて、素敵な造形です。魅力的なスゲです。近くにはウマスゲやヤガミスゲ、エゾミソハギやコキツネノボタンもありました。O会員がヌマアゼスゲの基部の鞘について説明してくれましたが、その時はわかった気になったのですが、家に帰ってきてから考えると、はて、詳細はどうだったろう・・?と。難しいですね。
移動しながらナヨクサフジの白花の写真をみんなで撮りました。みんな、白花が好きですね。
次の水辺はすがすがしく広く、水がきれい。セイタカハリイあり、カンガレイあり、フトイあり。コゴメイに、イグサ。ウキヤガラもいっぱい。キクモの沈水葉は小さなマリモみたいですね。オオバシナミズニラには、はあ、これがそうですかと冷たかったのに、ヒメシロアサザの小さな、小さな株に狂喜乱舞してしまったのは、何なんだろう・・ コナギだかミズアオイだかわからない株もありました。夏秋が楽しみです。みんな熱心に植物を観察しているのに、トンボばかり追いかけているT会員のような人もいます(私のことです)。ハラビロトンボ、ホソミオツネントンボ、イトトンボ類・・宝庫です。
解散後のオプションは湿地と草原です。ウナギツカミ類の花が咲き、ハナムグラがいっぱい。とてもいい香りです。もうチゴザサも花穂を出しています。ゴウソがいっぱい! そうか、これがゴウソだったんですね。チガヤはフシゲもケナシも。A会員から、アゼスゲとヌマアゼスゲ、中間型のもの、3種類並べて教えてもらいました。そしてタチスミレ。これを見なければ、今回ここに来た意味がありません。足の踏み場もないほどではありませんが、結構咲いていました。もうひとつ見たかった花があります。レンリソウです。土手の斜面の草刈りされて しまった場所の1部がロープで保護され、そこに咲いていました。 風当りが強いせいか花弁が傷んでいて残念でしたけれども、見たのは久しぶりです。
それから、カナビキソウの花がそこらじゅうに咲いていました。近くには、このあいだ見たオオルリハムシがいっぱいいました。個体によって、少しずつ色合いが違って、光沢も違って、興味深かったです。奥深いですね、遊水地の生物界は。(YT)
今季初めての調査会です。親睦を兼ね、車道を歩いて水辺に向かいます。
渡良瀬川の岸辺には、ノイバラが花盛り。香りが橋の上にまで漂ってきます。
車道といっても遊水地。侮れません。道端にオヤブジラミが咲いています。オオジシバリも咲いている。マスクサがありました。アゼナルコもいっぱい。
ヤブマオの立派な株の近くには、イチゴツナギが。A会員が、白くて長い葉舌を見せてくれました。ミコシガヤも穂を立て、つぼみですがミゾコウジュもありました。綿毛をつけたノニガナが可愛い。ゴマノハグサやハナイバナもあります。
さて水辺へ。これが難儀でした。泥に足をとられる。ケキツネノボタンや、ウナギツカミ類が出迎えてくれたのですが。場所を変えても同じでした。それでも、広大な眺めは楽しめます。水と土と草本類の共演。タガラシの大株。フトイ。カズノコグサ群落。コツブヌマハリイ(刺針状花被片の確認を怠り、A会員に指摘されましたが。)も群生しています。ミズハコベの写真を撮ったら、キタミソウまで写っていました。オオアブノメも、あっちにもこっちにも咲いています。
離れて対岸を歩いていたO会員がセリバヒエンソウとオオカワジシャを持って現れました。こんなところにまで、セリバヒエエンソウが。なんだかガッカリです。花はきれいですけれども。
解散後、有志でコギシギシを見にいきました。まだ花をつけた株もあり、感激です。初めて花を見ました。キタミソウのそばには、ムシクサの虫こぶが。これも初見です。少し離れたところには、すっくと花穂を伸ばしたミズタカモジ。そのそばにはウマスゲとヤガミスゲが。マルバヤナギの下には、何株ものヤブタビラコが花をつけていました。
もと来た道を駐車場まで戻ったのですが、やはり行きと帰りでは見つかるものが違うのですね。来る時は気がつかなかった、スイバの雄株がありました。今、土手はスイバで赤く染まるほどですが、雄株はその中にほんの少し。珍しいものに出会えて、ラッキーでした。(YT)
追記:コツブヌマハリイについて、その後A会員が刺針状花被片の確認を行い、コツブヌマハリイであることを確認しました。刺針状花被片については、下線の部分をクリックして、図鑑のコツブヌマハリイのページを参照して下さい。(2023/05/08)
総会後、有志でスゲの観察に向かいました。下見してきたA会員の案内です。
おお。遊水地は緑、緑。今が一番きれいかもしれない。なんと鮮やかな緑の大地。風が渡って来ます。ああ、もう、何にもいらない、この眺めがあれば。
と、歩いていくと、草原の一角が白く光っています。何だろう?チガヤではなさそうだけれど。A会員が一言。「オニナルコスゲの群落だよ」
谷地坊主ができていてデコボコの、水のたまった、まことに歩きにくい湿地を超えて近づくと。確かに!オニナルコスゲの大群落が。葉っぱがことごとく光っています。オニナルコスゲの葉の表面がこんなに光沢があるの、初めて知りました。
花期から果期に入ったカサスゲや、ヌマアゼスゲを見ながらさらに進むと、アゼスゲもありました。こちらは咲くのが遅いようで、花盛りです。ヒメシダの芽吹きも面白い。丸っこくて、可愛いです。
わずかに起伏があって、少し高くなったところは全然水がなくて、ノカラマツやナガボノワレモコウやハナムグラがありました。その中にも株立ちしているスゲが。さて、これはアオスゲかノゲヌカスゲか。メアオスゲ、というのもあるらしいです。雌小穂のノギの有無がどうのこうの・・私には難しく、帰ってから勉強します。このスゲは、ノゲヌカスゲのようでしたが。
さらに少し高くなったところには、イタチハギの芽生えもありました。こんなところにも進出しているのですね。チガヤもフシゲとケナシ、両方見ましたが、とても丈の低いものもあり、謎です。
ヌマトラノオの群生の中にはタチスミレの芽生えも見られました。近くのヨシの茎に、全身きらきら光るきれいな甲虫!オオルリハムシのようです。シロネも近くにありました。
土手の斜面にはシバスゲ。ハルガヤやクサボケ、ノニガナ。レンリソウがこれまたたくさんあって、つぼみをつけた株も見られました。開花期に、草刈りされないことを祈るばかりです。(YT)
付記:文中、アゼスゲとしたものは、A会員が持ち帰って精査したところ、アゼスゲではなかったと判明しました。限りなくヌマアゼスゲに近いけれども、ヌマアゼスゲとは花穂や花粉の形態が違うそうです。ヌマアゼスゲの変異なのか、他のスゲとの雑種なのかは、現時点では不明です。(2023/05/03 YT)
会場:ハートランド城(旧藤岡スポーツふれあいセンター)研修室
コロナ禍を経て、久しぶりの学習会です。
最初の発表者は、会員の青木雅夫氏。去年遊水地で新たに会員の田中由紀子氏が発見し、青木氏が同定したドクニンジンについてで、タイトルは「巴波川にドクニンジン」です。(注)
遊水地で見られるセリ科植物の種類と分類の話から始まって、ドクニンジンの分布、毒性の詳細を化学式を用いて説明し、摂取した場合の症状にも言及しました。それから発芽実験の結果や葉、花序、果実、茎の形態とシャクとの比較を詳しく説明しました。青木氏が撮影した写真が満載で、とてもわかりやすかったです。
そのあと、やはり青木氏から、去年遊水地で見つかったエドヒガンの詳しい形態について説明がありました。(最初の予定ではこのあと皆でエドヒガンの花見をするわけだったのですが、本降りの雨と、今年の開花が早すぎたため、見ごろを過ぎたということで断念しました。残念です。)
次の発表者は、同じく会員の白井勝二氏。2019年の台風で堆積した土砂や、2021年天候不順でヨシ焼きが行われなかった時の影響を踏まえた、ここ4、5年間の遊水地の状況を説明されました。特にサクラソウの株数の変化、開花した株の割合など、細かな数値で示されて、変化がはっきりわかりました。
また、ノジトラノオ、タチスミレ、フジバカマ、エビネ、シムラニンジンなどの現況もその折々の生育状況を撮影されており、被害状況などがはっきりわかりました。イノシシの掘り起こした希少植物の根を埋め戻す修復作業などもされており、感銘を受けました。
久しぶりの学習会で、想定外のことがひとつ。プロジェクターとパソコンをつなぐケーブルがない! 古河市在住の会員が自宅までとりにいってくれて事なきを得ました。その間、国土交通省出身の会員が、隣の部屋に展示してある、100年前の遊水地を描いた古図の解説をしてくれたのは意外な収穫でしたけれど。無事に終わって、ほっとしました。(YT)
(注)この発表の一部は、栃木県植物研究会 会誌 フロラ栃木に報告された。 青木雅夫、田中由紀子(2023), 栃木県巴波川にドクニンジンConium maculatum L.,フロラ栃木31巻,p.18-20
まず、セリ科の植物(これはハナウド)について解説中
学習会前に、展示「100年前の渡良瀬遊水地と今」の解説